全身まひに負けず、人さし指でエッセー集…宮崎の元ピアノ講師

 こんな記事を読むたびに、 自分が情けなくなります。


13年前から全身まひとなっている宮崎市の元ピアノ講師、 坂中明子さん(33)が、
わずかに動く左手人さし指の関節でパソコンのキーを打ち、 4年間かけて書き上げた
エッセー集「ひとさし指から奏でるしあわせ」 を10日今日出版されます。

当初は1字打つのも四苦八苦だったが、 娘の回復を信じた母親の浩子さん(60) と
二人で特訓。

笑顔も戻った今は周囲に感謝し、 同様の障害を持つ人たちにエールを送っています。

 

坂中明子さんはピアノ教室を開いている母親にあこがれ、 ピアニストを目指して
宮崎女子短期大音楽科に進学しました。

卒業後は浩子さんの教室を手伝い始めました。


ところが、 それから間もない1995年9月、 風邪薬を飲んだ直後に約30分間、
心肺停止状態に陥ります。

1週間後に意識が回復しましたが、 体や言葉の自由を奪われ、 医師から原因不明の
「全身まひ」と診断されました。


お母さんの浩子さんは 「何とか生きる喜びを実感させたい」 と娘を車いすに乗せて全国の
医療機関を回りました。

5年後、 埼玉県のリハビリ施設で左手人さし指をわずかに動かせることが判明した
のです。

母親が腕を支え、「コ」 の字に曲がった左手人さし指の関節でパソコンのキーを打つ
練習を始めた。当初は「ごはん」「トイレ」 などの単語が精いっぱい。

集中すると全身の筋肉がけいれんし、 1字打つのに1時間かかったそうです。


「たくさん文字を打てるようになったらいいね」 という浩子さんの言葉を機にエッセー
執筆を開始。

腕が意思に反し引っ張り上げられたり、 キーを間違えたりしながらも頑張りました。

今は1日に約100字打てるそうです。

エッセー集 「ひとさし指から奏でるしあわせ」は、 障害を背負った当初の描写から始まります。

「ティッシュを取ろうとしても取ることができないということ」 が一番ショックで、「ちゃんと手も
足もあるのに……」とつづりました。

「同情なんかされたくなーい!」「私の顔を見て! 目を見て!口を見て!そうすれば私の
言いたいことがほとんどわかるから」と求めている。

「全身まひだけど恋愛もするんだ」と、 リハビリ施設で知り合った彼「マサモリ」 さんと
のメールのやり取りも記されてあります。

無表情だった顔に笑みが戻り、 手足も少しずつ動かせるように。明子さんは 「健康時には
気付かなかった両親や兄弟、友人の大切さを知った。 この本で『ありがとう』を言いたい」。

お母さんの浩子さんも「失ったものは大きかったけれど、 家族のきずなが強まり、看病
してくれる方たちから優しさを教わるなど得たものはそれ以上に大きかった」 と話す。



 

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